2012年4月26日木曜日

2012/4/26のFunk 裏 Recommend

まいど。

2週間ほど前ですが、メンフィス・ホーンズのアンドリュー・ラヴさん(ts)が亡くなったのはご存知でしょうか。
StaxとかAtlanticとかHiとか、とにかく60〜70年代のサザン・ソウルのレコーディングでバックで吹いてるのはたいていメンフィス・ホーンズです。
オーティス・レディングもサム&デイヴもブッカーTもアル・グリーンもたいていそうだし、アレサとキング・カーティスのフィルモアのライヴだってバックはメンフィス・ホーンズです。

メンフィス・ホーンズ名義のアルバムも最近ようやくCD化が進んできたなと思ってたのですが、残念なタイミングですね。

Memphis Horns - One Mile High

これは1970年のファースト・アルバムから。
自分たちがバックをやってきたStaxのソウル名曲をインスト・カヴァーする企画。
アンサンブル中心ですけど、ホーン・プレイヤーだったら参考になるところ多しです。
TOPホーンズとかフェニックス・ホーンズとかよりも偉大なんちゃうかと思てるんですけどね。
いつかFunk 裏 Recommendでもちゃんと取り上げます。





では今週のFunk 裏 Recommend
オルガンのジョニー・ハモンド・スミスのアルバムで、Kuduの一発目のLPでした。

Johnny Hammond - Breakout

暇つぶしのジャム・セッションか取れ高が足りないのでその場で適当に作ったかなんか知らんけどサビくらい作ったれよといいたくなるズボラな曲です。
シュークリームだと言われたのに皮ばかり食べてる気持ちになります。

この曲、ジョニー・ハモンド自身はイマイチ乗り切れてないですけど、ビリー・コブハムのドラムは斬新です。
アフリカにも通じてる感じのビートですよね。
お鍋コトコト→やがてグツグツ→しまいに沸騰、な感じがうまく表現されています。
我ながらなんと稚拙な比喩。
何度も言いますがダシは昆布とハムです。

この時期のコブハムさんは何をやらせても、音楽へのエネルギー注入度が他のドラマーの2倍くらいあったような気がしますね。
1000円くらいするユンケルみたいなものです。

それにしてもこの曲いいところでフェイドアウト。
サビが無いのが恥ずかしかったんでしょうか。
これ以上聴かせるとクレームが来ると思ったんでしょうか。
それともタダの時間合わせ用だったんでしょうか。
間違いなく最後のやつですよ。

ジェームズ・ブラウンさんが作ったこれにそっくりな曲も貼っておきますね。

Jamas Brown - Give It Up Or Turn It A Loose


ジェームズ・ブラウンさんは大スターなのでちゃんとサビを作ってますね。
このギターのリフ思いついただけでもファンクにとっては発明と言っていいと思います。

ではもう1曲アルバムから。
この時期のジャズ・ファンク物のアルバムに必ず入ってるキャロル・キングのカヴァー。

Johnny Hammond - It's Too Late


まったり度がハンパないですが元は10分以上あってもっとまったりしています。
そういえばオールスターでダラダラ長いソロ回し合うというのもCTI/Kuduの特徴ですね。
この曲のアレンジはグローヴァー・ワシントン。

こまめに変えてるドラムのパターン聴いてるだけでも楽しいですが、エリック・ゲイルのギター・ソロのいぶし銀っぷりにはホレボレ酒場ですね。
ソロの途中にトレモロみたいなお得意フレーズが出てきますが、スタンリー・タレンタインの「Gibraltar」で重要すぎる役割を果たしたのと同じです。

では残りはジョニー・ハモンドさんの別のアルバムからカッコいいのを。
Prestige時代のファンキィな奴。

Johnny Hammond Smith - Dig On It

ここぞとばかりなバーナード・パーディのダチーチーが微笑ましいです。
僕なんてダチーチーとかダチータダチータで育ったようなものです。
この曲はジミー・マグリフさんのヴァージョンの方が好きですけど。

次はKuduのあと、Milestoneに移籍しての75年のアルバム。
ミゼル・ブラザーズのプロデュースで、レア・グルーヴの人気盤です。

Johnny Hammond - Tell Me What To Do

トレード・マークのオルガンどこ行ってんな感じですが、まあこういうサウンドにこれだけ対応できてるのはすごいですね。

僕もかつては、ミゼル・ブラザーズなんてチャラいもん聴けるか、とツッパっていたコテコテ原理主義時代もあったのですが、最近は大好物になりつつあります。
若い時は汗くさいロック聴いてた小僧がオッサンになってしゃばしゃばしたAORとかしか聴かなくなるのと同じかも知れません。
ある意味オッサンになるというのはしゃばしゃばになっていくということなのかも知れませんね。

Johnny Hammond Smith - Days of Wine and Roses


でも僕はやっぱりこんなんの方が好き。
オッサンになってもこんなお下劣なサケバラでワイワイやる方がええやん。

では今日はこの辺で。
また来週頑張ります。

2012年4月19日木曜日

2012/4/19のFunk 裏 Recommend

まいど。

クール&ザ・ギャングのファーストのCDが長い間廃盤やったのに最近輸入盤で出直したのを購入したのですが、その音質のあまりの良さに猿のごとく聴きまくっている今日この頃でございます。
なんというか今までの音がモザイクかかってたんちゃうかというほど生々しく、それ内臓ちゃうの、とでも言いたくなるほどの聴こえすぎな感じなのです。

あの、もしこれ持ってない人いたら購入オススメしますよ。
岩の塊を普通の歯でボリボリ喰らうみたいな感じの音が詰まってるファンク世界遺産のひとつです。
もちろん「Let The Music Take Your Mind」が入った10曲入りです。

しかしクール&ザ・ギャングって「Summer Madness」しかりなんですけど、エエ年こいたオッサンが足元から崩れ落ちてむせび泣くようなメロウ曲が不意打ちのようにアルバムに入ってますよね。
このファーストにも「Sea Of Tranquility」という「どうやって思いついてんそんなメロディ」な曲が入ってて、電車の中でこみあげてきた熱い汁をあくびのふりしてごまかすなんてひとり羞恥プレイになってしまいます。

これ。



では今週のFunk 裏 Recommendの音源紹介コーナーです。

ハンク・クロフォードは好きなだけに、そしてあまり同じように好きだという同胞に巡り会う機会が少なかったゆえにやや押し付けがましいコラムになってしまいましたが、みんなケニー爺とか聴くくらいやったらコレ聴いた方が楽しいのにと主張したい派です。

このアルバムの曲、これしかYouTubeに無かったんですけど。
お中元にどうですかね、ハム。

Hank Crawford - Ham

このアルバムの他の曲はドン・セベスキー編曲でストリングス付なんですけど、この曲だけピー・ウィー・エリスが担当してます。
つうか先にピー・ウィー・エリスと録音したセッションがほとんどオクラになって、この曲だけ使われたらしいです。
たぶんクロフォード=エリスという組み合わせはクロすぎたんでしょう。
いやマジで。
クリード・テイラーはAtlanticの時代の音との差別化をいちばん考えてたはずなんで、白人マーケットにも売れるようなバック・オーケストラを求めてたのだと思います。

ちなみにドラムはこの曲だけイドリス・ムハマッドで、残りの曲はバーナード・パーディ。
ベースはロン・カーター、キーボードはリチャード・ティーです。

しょうがないから他の作品のクロフォードさんを。
まあ正直どのアルバムもどのサウンドでもクロフォードはいつものスタイルで粛々とブルースを吹き続けているだけなのです。

これはKuduの3作目だったと思う。

Hank Crawford - Mr. Blues


イカ喰いながら日本酒のみたくなってきますね。
思わず視線をはずしたくなるほどのガン見され状態ですが。

これも同じ『Wildflower』ってアルバムから。

Hank Crawford - Wildflower

いとしさとせつなさと心強さと、って感じですよね。
人にやさしくしたくなります。

良かったら60年代のもっとラフで雑でいなたい感じのAtlantic盤とか、80年代以降のジミー・マグリフとのドス・ブルージーな双頭オルガン・コンボ作品もチェックしてみてください。
ある意味アメリカ人の心のふるさとって感じなのです。

最後にデヴィッド・サンボーンのTVショウに出演したときのライヴから。
ベイシー風のブルースやってます。



ヒゲそったらいいのにね。

では今日はこの辺で。
また頑張ります。

2012年4月12日木曜日

2012/4/12のFunk 裏 Recommend

まいど。

今週は丸の内コットンクラブさんでピー・ウィー・エリスさんのライヴを観てきましたよ。
JBホーンズとか以外での単独来日はおそらく初めてじゃないでしょうか?
JBホーンズではどうしてもメイシオ・パーカーとフレッド・ウェズリーに注目が集まりがちなんですけど、ピー・ウィーさんのビーバップ愛溢れるファンクも最高でしたよ。
なんてったってジャコパスで有名な「The Chicken」とか「Cold Sweat」作曲した人ですからねぇ。
入ってくる印税の額が違います。
カネの話かいってつっこんでください。

では今週のFunk 裏 Recommendの音源紹介コーナーです。
もっとベイ・エリア編続けても良かったんですけど、西海岸から抜け出せなくなりそうな予感がしたので切り上げてしまいました。
まだグラハム・セントラル・ステーションもWARもあれもこれもっていっぱいあったんですけどね。
いずれセカンド・シーズンさせてもらいます。

ほんで今週からKudu編。
クリード・テイラーのCTIのサブ・レーベルのひとつです。
「おまえが書きやすい方に逃げやがって」という人も多いかと思いますが、実にその通りなのでテヘペロとでもいうほかありません。

でもハンク・クロフォードとかグローバー・ワシントンJr.のことは一度どこかでちゃんと書きたかったのでいいのです。
Prestige 、Blue Noteのジャズ・ファンク期を経てフュージョン時代に突入した70年代ですが、その中でもブラック・フュージョンを前面に押し出したレーベルはKuduくらいかな。
ヴァイナルも安いしCDも安いからなんだか軽視されてるような気もしますが、これを期に改めていろいろ聴き直そうかと。

一発目は先週のトム・ハレルが演奏とアレンジ、作曲で参加しているイドリス・ムハマッドのKudu2作目。
アイドリスとかムハマドとかムハンマドちゃうのというツッコミはもういいじゃないですか。
本名レオ・モリスさんでニュー・オーリンズ生まれですね。

Prestigeのハウス・ドラマーとして数々のジャズ・ファンク名盤に貢献して自分のリーダー作も2枚Prestigeに残したあとKuduに移籍。
1作目の『Power Of Soul』も悪くなかったけど、ボブ・ジェームズのアレンジがちょっとお上品すぎたかも。
グローバー・ワシントンJr.はかなりの好演でしたけど。

クリード・テイラーもそう思ったのか2作目はアレンジャーをデイヴ・マシューズに変えてきた。
マシューズと言えば白人ながらにJBバンド仕込みなのでファンキィ盛り多めで書いてくれます。
しかしこの時期のマシューズのアレンジャー仕事量ってハンパない。

Idris Muhammad - House Of The Rising Sun

この陰気なトラッド・ソングがこんなにファンキィになってるのもマシューズさんの手腕なのです。
サンボーンも鬼みたいにカッコいいですね。
この人の歌バンのオブリガートはよだれが出るほどカッコいい。
70年代サンボーン名助演集ってコンピレーション作りたいくらいです。

イドリスのドラムは重心が低くて安定してて推進力があって、それでいてなんというか、聴いてるだけでワクワクするというか喚起されるものがありますよね。

Idris Muhammad - Hey Pocky A-Way   

同じニュー・オーリンズのザ・ミーターズのカヴァー。
そういえばミーターズのドラマーのジガブー・モデリステとどこか通ずるところがあるような気がする。
ニュー・オーリンズ愛みたいなものひしひしと感じますね。
いい仕事してるトロンボーンはフレッド・ウェズリー。

Idris Muhammad - Sudan

この曲はトム・ハレル作曲/アレンジのラテン風。
ハレルのソロがあいかわらずとんがってる感じ。
この人のソロの魅力を誰かうまく解説して欲しい。

Idris Muhammad - Hard To Face The Music   

疾走系の王道ジャズ・ファンク。
テナーはMJQのジョージ・ヤングだけど割とイケてます。

イドリスさんはこのあとKuduに2枚アルバム残してFantasyに移籍するんですが、あとの2枚は時代もあってややブギー〜ディスコ的な音になってる感じでしょうか。
まあそれはそれで悪くないですが。
80年代以降は4ビートが多いですね。
ファラオ・サンダースの「You've Got To Have Freedom」とか名演です。
ディスコグラフィーもありますよ。

最後にイドリスさん最狂の一曲を。
イドリスさんだけじゃなくて全員狂ってますが。
曲の途中からヘッドバンキングせずにはおれない状況になってきますので頭痛いときとか満員電車乗ってるときとか高いイヤリングつけてるときは聴かない方がいいですよ。

Rusty Bryant - Fire Eater

おつかれさまでした。
いつも読んでいただいてありがとうございます。
また頑張りますね。



2012年4月6日金曜日

2012/4/5のFunk 裏 Recommend Disc

まいど。

あたふたしているあいだに桜の季節になってしまいましたね。
おととしまで桜なんて見て何がおもろいねんと思ってたのですが、去年から桜を愛でたくて仕方ない体質になってしまいました。
ので早くもそわそわしております。
なんだか世の中全体がそわそわしているようにも思いますよね。


では今週のFunk 裏 Recommendの音源紹介タイムです。
トム・ハレルなんてファンク/ソウル・ファンの人にとっては誰やねんかも知れませんが、アングラなファンク物が続くと眠たぁなってくるジャズ系プレイヤーの方も多いのではと考え、タマにはキリッと有名ジャズマンものも紛れ込ませておかないとと考えたわけです。

それでこのコラム書いて編集部に送った翌日にトム・ハレルさんの来日公演情報が公開されるという偶然っぷりで、先週に続いてコットンクラブさんの回しもんみたくなってしまったというわけです。
コットンクラブさんのステマ状態です。

というか来日のことも知らないで書いてたわけなのでもはやステルスどころか超能力みたいなもんでございます。
書けば何でも来日するんちゃうかと思い始めたりするわけでございます。
アレサ・フランクリン書いていいですか。


ではまず知的モーダルなジャズ・ファンクから。

Tom Harrell - Aurora

コード進行も知的っす。
ボブ・バーグがソロ吹いてくれたらもっと良かった。

こっちはボブが炸裂してる高速サンバ。

Tom Harrell - While There's Time


この無鉄砲な感じが大好き。
クールな青い炎が燃え上がる、みたいなトム・ハレルのソロにも萌えますね。

そしてみんな大好きなインヴィテーション。

Tom Harrell - Invitation


このハレルのソロは神がかってると当時は話題になったそうですよ。
たしかに。

トム・ハレル=ボブ・バーグのなかよしコンビは2年後のバーグのデビュー作でも一緒にやってます。
Xanadoなんて渋いレーベルから出たのがこれ。

Bob Berg - Shapes (from the album "New Birth" 1978)


このジャズ・ファンクカッコよすぎ。
ボブ・バーグも80年代以降はマイルスとかチック・コリアと一緒にやってずいぶん洗練されたとうか垢抜けたというか、それでいていつも前にはマイケル・ブレッカーがいる、みたいなちょっとかわいそうなポジションだったのですが、70年代の荒削りな感じはホント最高。
シダー・ウォルトンのバンドにいるときとかよかったすねぇ。
上のアルバムもピアノはシダーです。

ドラムで参加のレニー・ホワイトは75年に初リーダー作出してて、そこにもトム・ハレルが参加してます。
でもレニー・ホワイトのベイ・エリア的なのは次作である77年の『Big City』ってアルバムにTOPのホーン隊がまるまる参加してファンクやってるとこ。これ。

Lenny White - Big City

という感じで、70年代のベイ・エリアはほんとうにジャンルの垣根無くジャズとかファンクとかR&Bとかロックとかミュージシャンが入り乱れてワイワイやってた、ということです。

今日もあっさり系ですいませんが。
この連載の今後のもって行き方考えんのであっぷあっぷ状態なのです。
ひぃ。

ではまた頑張りますね。