2012年8月31日金曜日

2012/8/30のFunk 裏 Recommend

まいど。

ほんとは今夜ブルーノートにミンガス・ビッグバンドを観に行きたかった人がとうてい行ける状態に無いことを悟り歯ぎしりしながら書いているブログがこちらになります。
いいさ浮いた8400円でレコード買いに行ってやるから。


さて今週もヴェテランの訃報がありました。
フィラデルフィアのアルト・レジェンド、バイヤード・ランカスターさんが23日に70才で亡くなりましたよ。

こないだのヴォン・フリーマンさんがシカゴという街にこだわったほどではありませんが、バイヤードさんもフィリーという街を自分のアイデンティティの中の重要な要素として表現に加えていた人だと思います。


闘争心溢れるアヴァンギャルドな芸風が身上でしたが、オーソドックスなビーバップから8ビートまで、どんなスタイルにもヴァイタリティたっぷりのプレイで対応するような強者でした。
ちょっとフリーがかったクロいジャズ・ファンクが好きなオレなんかには大好物な感じで。

Byard Lancaster - Dog Town (from Funky Funky Rib Crib, 1974)


オーネット・コールマンの『Dancing In Your Head』を予期させるようですね。
このアルバムは確か渡欧時にレコーディングしたフランス録音だったと思いますが、強烈なファンクが入っててオススメですよ。
フリージャズだと思ってたらやけどするでぇ、という感じです。

こっちは68年のデビュー・アルバムから。
ギターは変態ソニー・シャーロックさんです。
下の写真のギターの人ではありません。

Byard Lancaster - John's Children (from It's Not Up To Us, 1968)



バイヤードさんのフィリー魂のルーツは同じ街で生きた巨人であるジョン・コルトレーンさんだったのではないかと思います。
1968年Atlanticからの初リーダー作にはこの「John's Children」という曲が入ってるし、40年後の2008年のシングルにも「Saint John Coltrane」という曲が入っています。

コルトレーンは聖人になりたかったのだという話を耳にしますが、ある種のミュージシャンやジャズ・ファンの間ではかなり神に近い存在だったんだな、と思うとしみじみ酒場ですね。

あと一昨年くらいにリイシューされた超レア盤ですけど、サウンズ・オブ・リベレーションというフィラデルフィアのミュージシャン連合によるアルバムがとんでもなくドープでしたよ。

Sounds Of Liberation - New Horizons I (from Sounds Of LIberation, 1972)

ひでえジャケですけど。
右下の人が化学室の筋肉標本に見えて仕方ない。





ということで大した笑いも無いままに今週のFunk 裏 Recommendのおさらいコーナーに参ります。
考えてるヒマなんて無いからね。


アルバムの1曲目はこんな感じです。

Melvin Jackson - Funky Skull

まるでイントロが永遠と続いてるだけのような堂々たる一発ものなんですけど、ビートのカッコ良さとDWBの変態度を楽しんでください。

リズム隊はなぜかCadetのハウス・バンドで、フィル・アップチャーチ(b)、モリス・ジェニングス(ds)、ピート・コージー(g)という編成。
これと「Cold Duck Time」の2曲だけこの編成です。


残りの曲はAACMホーンズに、名手ビリー・ハート(ds)、ジョディー・クリスチャン(org)という当時のエディー・ハリス・コンボのリズム・セクション。
この曲とかシブいです。

Melvin Jackson - Bold & Black


軽くスピリチュアルさまで漂わせています。

ホーン隊の中のレスター・ボウイ(tp)、ロスコー・ミッチェル(ts)は言わずと知れたアート・アンサンブル・オブ・シカゴの人です。
フリー・ジャズのイメージが強いですけど、自主的にファンクもやってたりします。
こんな感じ。


かっちょえー。

それでもうひとりのサックスのバイロン・ボウイはレスター・ボウイの弟なんですけど、もうひとつ下の弟であるジョセフ・ボウイが後に結成するデファンクトのメンバーでもありました。


デファンクトは90年代とかえらいバカにされてた気がしますけど、今ちゃんとやればリバイバル的にまあまあ売れそうな気がしますね。
こういうマッチョでバカっぽくて実はインテリな感じは今あんまりないです。


メルヴィン・ジャクソンのエディー・ハリス・バンドでの活躍もどうですか。
有名なレス・マッキャンとの邂逅『Swiss Movement』(1969)の2日後のモントルーでのライヴです。



あんまり誰も言わないけどエディー・ハリスは相当変態ですよね。
この音色といい顔つきといいニュルッとしたフレーズといい。
オレにとって抱かれたくないミュージシャンのかなり上の方にいます。


メルヴィン・ジャクソンのCDもシカゴのDusty Grooveというレコ屋が再発したんですけど、もうすぐ廃盤になりそうな気配ですので変態好きな人はお早めに。



というわけでテンション上がらないまま今日は締めさせていただきたいと思います。
あれ以来Gは出ませんでしたが、やる気も出ないままでした。
来週こそ頑張ります。


2012年8月26日日曜日

2012/8/23のFunk 裏 Recommend

まいど。
木曜のはずだった更新が遅くなったのは以下のような訳です。

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昼間見ていたネットのニュースでナポリの街に巨大Gが大量発生という最悪な記事を読んでてそんなおぞましい街は巨神兵に焼かれてしまえとか悪態ついて家に帰ったら自分ちのキッチンを巨大なGが這ってた人がその後別人のようにヘコみながら書いているブログがこちらでございます。

なんか今日の奴はつや消しブラックでタイヤゴムみたいな感じでしたね。
そのつや消し感が厳しかった今年の夏を乗り越えてきたツワモノなんだということを示してるみたいでした。
身体中のゾゾ毛というゾゾ毛がシャキーンてなりましたよ。
Gジェットという神レベルの最終兵器で息の根を止めましたがその後触れなくて1時間くらい絶望していました。
Gジェットを右手に持ったオッサンがひとり部屋の中で文字通り呆然と立ち尽くして絶望しておりました。
オレの家も焼いてくれ巨神兵。

しかし去年の冬にこの部屋に越してきて、ちょっと古い建物だしいかにも出そうだからと思ってコンバット的なものとかブラックキャップ的なものとかをイラクの地雷並みに部屋じゅうに設置してあって、その甲斐あってか今年の夏はこんなにクソ暑いのに今まで姿を見かけず平和っていいなあと思っていた矢先、もはや夏も残すはロスタイム3分間みたいなドロー目前の状況になって、いやそんなの関係ねえしみたいな感じでつや消し先輩に出てこられると、ロスタイム終了直前にセットプレイで点入れられましたみたいな精神的ダメージで虚脱感ハンパ無いこと山の如しですね。

今もパソコンに向かいながらもまた這っていたらどうしようと思うあまり数秒置きにキッチンの壁を確認する超高校級のビビリです。

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木曜の夜にここまでブログを書いたあと、書き続けるモチベーションも失せてフテ寝してしまって気付いたら土曜の夜になっていたという訳です。
要するに更新が遅れたのをGのせいにしてしまえと考えている奴が書いているブログだということです。

幸いにもその後はGは出ておりませんが、夜部屋に入るときには上から下まで部屋じゅうをなめるように見回してその不在を確認してからでないと足を踏み入れることができない状況です。
ビビリと言われようがヘタレと言われようが、もはや胸を張って明瞭な発音で「助けてください」と言いたい心境なのです。




というわけで今日は遅くなったうえに丁寧にブログ書くようなモチベーションが上がっているワケも無いのでやや雑な感じで今週のFunk 裏 Recommendの音源紹介に参りたいと思うのです。


シカゴ・ファンク特集も結局ジャズもの続きになってしまっておりますが、シンガー物とかコーラスグループもの除くとヴォーカル&インストゥルメンタル・グループものってそんなに無いですよ、実際。

それで今日は世界3大スピリチュアル・ジャズ・レーベルの一角であるBlack Jazzからのこのレコード。
スピリチュアルの3大レーベルっていうのはオレとかが勝手に言ってるんですが、Strata East、Tribe、Black Jazzの3つがそれです。


関係ないですけど「スピリチュアル」の表記を「スピリチャル」ってする人たまにいますけど、あれオッサン的なので止めといた方が良いと思われます。
「リイシュー」のことを「リイッシュー」って書くのも止めといた方が良いです。


ジ・アウェイクニングはそんなBlack Jazzカタログの中でも玄人好みで硬派なグループ。

The Awakening - Slinky

いいジャズ・ファンクなうえに、テーマとかもちょっと凝ってて知性的ですらありますね。
エレピの涼しい音もいいです。
エレピの音は70年代の録音で聴くのが最高です。

続いてアフロ・ジャズ〜グローバル・グルーヴな曲。

The Awakening - Mode For D.D.


紹介したのはセカンドですが、ファースト・アルバムの方もシブい曲揃いです。

The Awakening - Kera's Dance (from "Hear, Sense and Feel", 1972)



Black Jazzというのはカタログ20枚しか出さなかった小さなレーベルなんですけど、レア・グルーヴ好きならきっと反応するであろう作品揃いでどれも見逃せないです。
何度もリイシューされてますが、最近ついに1枚1000円ちょいくらいまで大きく値下がりしてますので興味ある人はダグ・カーンの作品あたりから始めてみてください。

お金が余って仕方ない人はBlack Jazzレーベルの全アルバムが紙ジャケットでボックスセットになっているという、頭のおかしい人(オレ)が売上ノルマをかせぐために考えたとしか思えないおトクなまとめ買いセットも売ってますので、こっちでもいいんじゃないでしょうか。




Black Jazzの話はディスコグラフィーから権利関係の話まで、色々と書いてみたいんですがいずれ近いうちにどこかでやりますね。


それですいません、今日はこれであっさり終わりなんですが、ちょっとだけ告知コーナーいいですか。

8月29日にソニー・ミュージックさまより発売になりますブラス・ロックのコンピ『ブロウ・アップ!ブラス・ロックのすべて』の曲解説を書かせていただいております。
サックス&ブラス・マガジンのU編集長が鬼の形相で監修/企画立案/選曲/序文まで担当された入魂の企画です。

あとこれに関連したブラス・ロック名盤のオリジナル・アルバム紙ジャケ・リイシュー企画が同じくソニー・ミュージックさまより9月5日に発売になります。
こちらでも何枚か解説を書かせていただきました。
『チェイス/復活』『ブラッド・スウェット&ティアーズ/3』『アステカ/月のピラミッド』です。

あと、8月28日発売のサックス&ブラス・マガジンにもブラス・ロック関連の記事を書かせていただいております。
こちらの号ではスタン・ゲッツのバイオを、村上春樹さんが降りてきたかのようにフレーズパクりまくり状態で書かせていただきました。
もちろんいつもの表Funk Recommendコラムも書かせていただいております。




そういえばウェブ連載させていただいておりますFunk 裏 Recommendも連載開始より1年を迎えました。
編集長からまだ続けてよいとのお言葉いただいておりますので引き続きよろしくお願いいたします。


というわけで今日は笑いも情報も少なめで恐縮極まりないのですが、Gに免じてお許しください。
来週こそ頑張ります。
Gさえ出なければ。


2012年8月16日木曜日

2012/8/16のFunk 裏 Recmmend

まいど。

世間がお盆休みであることに気付かなかったふりして普通に働いている今日この頃でございます。
8月がはや半分終わっていることにも気付かないように努めております。
気持ち的にはまだ6月下旬くらいで、夏はまだこれからで、年齢的にはまだ32才くらいなつもりでやっております。
我にかえるという名の勇気をください。
Amazonで売ってればいいんですけど。

関係ないですけどこないだAmazonでまとめ買いしたのはメガシャキです。
みんなアレまずいって言うんですけど、実際メガシャキ味のガリガリ君を夢見るほど個人的には好物です。
ガリガリ君と言えば連載元のリットーミュージックさまがなかなか大人げないガリガリ企画をされていたので噴いてしまいました。
日本の夏はキンチョーの夏でもなくTUBEでもなくガリガリ君に象徴されるようになってきましたね。


さて連載の方はカール・デイヴィスさんの追悼企画だったすけど、そう言っているあいだにまた新たな巨匠が亡くなってしまいましたよ。

シカゴ・ネイティヴでシカゴ・ローカルにこだわり続けたテナーマン、ヴォン・フリーマンさんが11日に88才で鬼籍に入られました。
息子はチコ・フリーマンという世界的に有名なテナー・マンです。

NYやLAといったジャズのメインストリームで演奏するチャンスや誘いは何度もあったにもかかわらず、とにかくこの人はシカゴを離れるのがいやだった。
コルトレーンがバンドを去ったあとにマイルスが後釜としてヴォン・フリーマンを誘ったときにはマイルスからの電話に居留守を使い続けたそうです。

デビュー・アルバムを吹き込んだのも随分遅くって49才の時。
友人であるローランド・カークがその過小評価っぷりを見かねてプロデュースを買って出てAtlanticから出されたのが『Doin' It Right Now』(72年)です。
びっくりするような名盤ではないけれど、シカゴ・ローカルの現場のタフネスみたいな味わいが滲み出てるいい作品ですよ。
このアルバムのリンク貼ろうとしたけどまたYouTubeに怒られたので代わりにこれを。

George Freeman - Free-Man (from the album "Franticdiagnosis" 1972)


ヴォン・フリーマンの弟はジョージ・フリーマンというギタリストでこちらも同じくシカゴ・ローカルで活動したひとなんですけど、その弟の作品に参加したのがこれ。
レアなジャズ・ファンク・アルバムとして有名な一枚だけどCD化はまだです。
もうすぐ出るという噂もありますが。

ヴォンさんのテナーは訛が強いというか、アクの強い個性ですね。
そしてジョージ・フリーマンというギタリストの特筆すべき変態度についてはまた別途書きたいんだけど、まあとにかく勤勉実直そうなおっさんの中にさえとんでもない破壊衝動が隠されていることはよく分かります。


もう少し時代を遡って珍しいのはこのシングル。

60年代のBlue Noteに吹き込んだ一連の作品以降、鬼才ピアニストとしての地位を確立させたアンドリュー・ヒルのシカゴ時代の作品。

Andrew Hill - Down Pat (1956)

あのトンがってたヒルのオールドスクールなスタイルに驚くんですが、コンボのメンバーはこんな感じ。

Andrew Hill (p)
Von Freeman (ts)
Pat Patrick (bs)
Malachi Favors (b)
Wilbur Campbell (ds)

パット・パトリックはサン・ラ楽団を長らく支えた人だし、マラカイ・フェイヴァースはのちのアート・アンサンブル・オブ・シカゴのメンバー。
50年代にはアンドリュー・ヒルもサン・ラもAEOCもひとつにつながっていたシカゴという土地のディープさを感じますよね。






それでは今週のFunk 裏 Recommendの音源紹介に参ります。

今回の話は有名な話なので知ってる人も多かったかも知れませんけど、こんなハッピーな曲がどんどん知られてもっとカヴァーされまくったらいいのにな、と我思うのです。

まずはオリジナルのインスト版「Soulful Strut」から。

Young-Holt Unlimited - Soulful Strut


続いて元ネタ、というか本来こちらがオリジナルのヴォーカル入り。

Barbara Acklin - Am I The Same Girl


オケが使い回しなのがよく分かりますよね。

作詞・作曲はチャイ・ライツのユージン・レコードさんとBrunswickの専属作家/アレンジャーだったソニー・サンダースさん。
ユージン・レコードさんはバーバラ・アクリンのダンナさんでもあります。

「ダンナが私のために作った曲をインストにして先に売りやがってこのハゲ!」みたいな心境でしょうか。
実際アト出しのアクリンさんのシングルの方がセールス的には伸びなかったので余計にかわいそう。

おまけに後年他のアーティストにカヴァーされたヴァージョンの方が良く売れたりしています。これとか。

Swing Out Sister - Am I The Same Girl (1992)



まあそんなモロモロもカール・デイヴィスさん(ハゲてはいない)の采配であってヤング・ホルトさん(ハゲてはいない)には罪は無いんですけど。

このアルバムは「Soulful Strut」以外にもファンキィな曲満載の楽しめるアルバムになってますよ。
このアルバム単位でのCDよりもベスト盤の方が入手しやすいかも知れませんけど。

Young Holt Unlimited - Who's Making Love


ヤング・ホルトはこのあとヒットが出なくって、70年にはAtlanticに移籍、ちょっとだけニュー・ソウル・テイストまぶしたりしてアルバム3枚くらい出したあとにPaulaというマイナーレーベルで最後のアルバムを残してます。

最終的にはこんなコスプレになってしましました。
そして特にヤング・ホルトである必要が感じられない音楽になってしまっている気もしますね。

要するにいかにラムゼイ・ルイスがエラかったか、という話でもあります。

Young Holt Unlimited - Pusher Man (Plays Super Fly, 1973)





では今日はこの辺で。
もう少し6月下旬の気分で頑張ってみます。






2012年8月9日木曜日

2012/8/9のFunk 裏 Recommend

まいど。


先週のBlogでカレーうどんが食べたくなったので今週はきっちりカタを付けてきました。
真夏のカレーうどんは最高でしたね、こんな風に。


いただきますをしたらうどんにはすぐ行かず、まずはレンゲでカレー汁をすくって2、3くち汁だけでいただきます。
口のなかに広がるカレー汁の豊穣な味わい。

インド・ミーツ・ジャパニーズ in オレの口腔内的な状況で異文化同士ははじめ主張し合い、やがてひとつに調和してオレの舌をかわいがります。
まさにテンションからリラクゼーションへというエンターテイメントの基本通り。

何度も口にしているにもかかわらず、そして食べる前にこんな味だと想像しているにもかかわらず、いつもそれらを裏切るかのような新鮮さを感じさせられるのはオレだけでしょうか。
まるで懐かしい街を歩く時のように、あ、またこのやさしい世界に帰ってこれたんだ、とオレは心の中でつぶやくのです。


うまい。


この瞬間にオレ的なカレーうどん的エクスタシーは早くも最高潮を迎えます。
早漏だと言われようが、ウフフ我慢できなかったのね坊や、と言われようがこの瞬間がピークであることはゆるぎません。
カレーうどん的祝砲が心の中で高らかに打ち鳴らされ、カレーうどん的パレードは目抜き通りに差し掛かります。

それからわずかに震える手でレンゲをお箸にもちかえ、オレを待っていてくれたであろううどん先輩をやさしくリフトアップします。
うどん先輩はさながら金色(こんじき)の衣(ころも)をまといてカレーの野に降り立った救世主のごとくです。

うどん先輩はオレの口のなかで、ほどよい弾力、ほどよい太さ、のどごしのスムーズさ、カレー汁との抜群の相性のよさ、といったカレーうどん的世界の主人公たるポテンシャルを存分に発揮します。
この時点でカレーうどん的エクスタシーの第2波がさざなみのようにオレを包みます。

タマネギ、かしわ、といった脇役の存在もじゅうぶんに立場をわきまえていて見事でした。
細長くタテにスライスされたタマネギは時折うどん先輩に混ざってやんちゃなパフォーマンスで魅せますし、小さな鶏肉片はいかにも動物的な弾力と味わいでオレの狩猟本能と食欲を刺激してくるようです。

このそば屋はライスをタダで付けてくれるところも良かったです。
うどん先輩をちゅるちゅるやってる途中、一息ついたところでおもむろにライスを手に取り、やさしくそしてたっぷりとカレー汁をかけてレンゲのままライスをいただく。
さっきまで真っ白だった白米の地平を金色(こんじき)の恵みの雨で濡らすカレー汁という名の天使たち。

そこではうどん先輩では味わい尽くせなかった出汁のきいたカレー汁のアナザーサイドが白米という媒介の前にあらわになるのです。
ここで再び柔らかなカレーうどん的エクスタシーが平和な昼下がりのそば屋を祝福するように訪れます。

しかしカレーうどん的平和とはいつかサヨナラしなければいけない宿命が待っています。
うどん先輩とライスを食べきってしまったあと、カレー汁をどこまで飲むか、という永遠の、そして根源的な命題が、すでにオレ腹ぱんぱん的なシチュエーションのなか提示されます。

もうオレ腹ぱんぱん的なシチュエーションなうえに片栗粉パワーが溶解してカレー汁がユルくなってきてるうえに温度的にも当初の熱気は冷めてしまってはいるものの、次いつこれを味わえるか分からないのでこのチャンスにカラダに叩き込んでおきたいというカレーうどん的な執着と、たんにもったいないという意地キタナさが生み出す葛藤。

最後に水を飲んで口のまわりを拭くところまでがカレーうどん的エクスペリエンスです。



音楽Blogとは思えない前書きで恐縮ですが、これを読んでカレーうどん的エクスペリエンスに駆られる人がひとりでもいたらいいなと思う今日この頃です。
しかしダイエット中なのにこの炭水化物パラダイスはいかがなものか。




では今週のFunk 裏 Recommendの裏解説です。
書きたいもしくは書いとかなければいけない情報が多いコラムはどうしても堅ッ苦しい感じになってしまうと反省しております。
もっとオモロいコラムになるよう精進します。


さて個人的にぜひ一度試してみていただきたいフィル・コーランの2回目。
息子たちとの初の連名アルバムの1曲目はこんな感じ。

Kelan Philip Cohran & The Hypnotic Brass Ensemble - Cuernavaca


エキゾティカなグルーヴですね。
メキシコの街を追想する曲ですがマリアッチ的なムードが異国情緒を醸し出してます。

このアルバムでは全曲フィル・コーランの曲を演奏してるんですが、フィル・コーラン自身は演奏に加わってるのかな?
クレジットが無いのでちょっと分かりませんがたぶん加わってないのではと。


Gabriel Hubert - trumpet
Jafar Baji Graves - trumpet 
Amal Baji Hubert - trumpet
Tarik Graves - trumpet
Saiph Graves - trombone
Seba Graves - trombone
Uttama Hubert - baritone
Tycho Cohran - sousaphone

これにドラムスとパーカッションも加わっていたと思います。

メンバーであるフィル・コーランの息子たちはみんなどう見ても20代なニイちゃんばかりなのですが、フィル・コーランってたしか現在85才だから、60才前後でガンガン子づくりしたってことですよね。
しかも子供たちの年齢分布が近そうなうえにファミリー・ネームが3種類に分かれてるのを見ると、一夫多妻のハーレム状態にあったのではと思われます。

60才でハーレムっすよ。
そしてこの精力っすよ。
コーラン師匠色んな意味でリスペクトっす。
生きる希望みたいなものが2ミリくらい湧いてきました。


息子たちのPVがあったので貼っておきます。

Hypnotic Brass Ensemble - War



これは2009年に来日した時の原宿のノースフェイスであったイベント時のライヴ映像。



なんか止めようが無いプリミティブな野性と、例の異文化から感じる畏怖みたいなの感じますよね。
ナマで観るともっと感じますよ。

このときの来日で朝霧JAMに出てたのを観たんですけど、初めての客を前にして圧巻のパフォーマンスでしたね。
ライヴが終わったあとそのままステージでCDRを手売りし始めたのが印象的でした。
息子たちもたくましい。

オヤジと連名の最新作は楽曲のイメージ優先でちょっとだけダンサブルさとかエンターテイメントさに欠ける点があるので、初めての人は右側の方の最初のアルバムを試されるのがいいのではと思います。

で気に入ったら来日公演行ってみてください。



そんな感じで終わってよろしいでしょうか。
カレーうどんの話が終わった時点で実はチカラ尽きておりました。

また来週頑張りたいです。
お盆休み中だけど。
その前に仕事が片付かねぇ・・・。



2012年8月2日木曜日

2012/8/2のFunk 裏 Recommend

まいど。

おい今年の夏よ、おまえが相当強いのは良く分かったからそろそろ手ェ抜いてくれよ。
というのが正直な意見です。
そらグリーンランドの氷溶けるっちゅうねん。


氷で思い出しましたが今週気になったニュースはガリガリ君の新製品のニュースです。
「ガリガリ君リッチ コーンポタージュ味」が9月に発売されるというニュースを聞いて赤城乳業の中の人がいよいよ壊れだしたのかといっしゅん心配になりました。


発想もスゲェんだけどそれを真面目に作っちゃうプロセスがスゴいっすよね。

このまま進んでいくとおそらく、
ガリガリ君バーベキュー味 とか
ガリガリ君炭火焼き鳥味 とか
ガリガリ君カレーうどん味 とか
ガリガリ君サッポロ一番塩ラーメン味 とか
ガリガリ君天下一品こってり味 とか
うまい棒なみにメニューが細分化していってどんどん意味不明なことになっていって、最終的には「ガリガリ君プレーン」というのが登場して、ナチュラル志向のOLとかが「やっぱなんだかんだ言ってプレーンがガリガリ君本来の素材のうまみが出てて最高よね」とか言い出すような気がします。

プレーンってただの氷なんですけどね。


関係ないですが、似たパターンでヤマザキのランチパックも同様の暴走ぶりなのはご存知でしょうか。
野菜炒め
ポークカレー
焼き鳥&ポン酢ソース
回鍋肉
和風ダシが決め手のカレーうどん
これら全て実在するランチパックなのですが、いったい人生のどの場面で焼き鳥を食パンにはさんでポン酢かけて食べる瞬間を想像するのでしょうね。

にわかにカレーうどんが食べたくなってきました。


では今週のFunk 裏 Recommendです。
シカゴのフィル・コーランはジャズの表歴史では全く名前の出てこない人ですけど、ぜひ一度試してもらいたい裏の偉人です。

まずはこのとんでもないトラックからぜひ。
獰猛な異文化から時折感じる“畏怖”のような感覚は誰でも知ってると思うんだけど、そういうのを感じるトラックです。

Phil Cohran And The Artistic Heritage Ensemble - The Minstrel

電気カリンバの跳ね方がアシッドすぎますよね。
究極のグルーヴ、というと大げさかも知れないけど、これと似たような渦状のグルーヴを他に知りません。
これが1968年だもんなあ。

『On The Beach』というアルバム・タイトルはコーラン楽団が当時ミシガン湖のほとりの公園で演奏していたからで、ニール・ヤングの同名アルバムとは何の関係もないと思われます。

その瞑想的なタイトル・トラックはYouTubeに無かったすけど代わりに強烈なアフロ・ジャズのこれを。

Phil Cohran And The Artistic Heritage Ensemble - Unity


コーランとAHEのレコーディングは1967年と68年に集中していて、この時期に自身のZuluレーベルから2枚のLPと何枚かのシングルをリリースしています(たぶん)。

当時リリースされていたもう一枚のアルバムがこちらの『The Malcolm X Memorial』。

Philip Cohran And The Artistic Heritage Ensemble - Malcolm X


強烈ですよね。
コーランはこののち、シカゴにあったマルコムX・ジュニア・カレッジで教鞭をとることになります。

この時期にリリースされたアルバムは2枚ですが、コーランとAHEには膨大な未発表レコーディングが残されていて、その一部は近年ようやくリイシューされたりしました。
これとか。

Phil Cohran And The Artistic Heritage Ensemble - The Spanish Suite (Part. 4)


シングル集も出てます。

Phil Cohran And The Artistic Heritage Ensemble - Frankiephone Blues


コーラン関係の67−68年のレコーディングで今入手可能なのは以下の5枚かな。
興味ある方はまずは一番左の白いヤツを試してみてください。



フィル・コーランの話はもう少し続くんですがそれは次週の更新で。
ではまた来週頑張ります。