今日はビルボード・ライブでロバート・グラスパー・エクスペリメントを観てきましたよ。
となりの席にぱりっとした格好のサラリーマンが座ってたんですが、ライヴ開始直後からシエスタに入られてライヴ終了するまでずっとコックリさんだったのです。
なんですけど曲が終わって皆が拍手するたびにそれが義務であるかのように寝ながら弱々しく拍手してたのがオモロかったですね。
「もういい、君はよくやった・・・」ってやさしく背中なでてあげたかったのですが、もちろん僕は常識人なのでそんなことはしませんでしたよ。
ライヴの方はめちゃ良かったですねぇ。
なんというか「今」の音楽でした。
ロックとかクラブ・ミュージックの世界で生み出されている新しい音楽、ダブ・ステップとかネオ・シューゲイザーとかチル・ウェイヴとかと共鳴するような同時代性を感じさせてくれるようなサウンドでした。
そういう現在進行形の音楽が持っているヒリヒリ感がありましたね。
その類いのヒリヒリ感をジャズというジャンルにカテゴライズされているアーティストから感じるのはこのところあまり無かったことです。
ヒップホップとかR&Bとのクロスオーヴァーが特徴とされる彼の音楽ですが、それはもはやことさら言及するレヴェルでも無いと感じるほど血肉化されてしまっていて、そういうハイブリッド自体に斬新さは皆無だし特徴としてあげつらうことさえ陳腐なことのように思います。
それはもしかしたら当のヒップホップやR&Bが現在進行形のヒリヒリ感を失って久しい音楽であるから、ということも言えるのかもしれません(個人的にそうは思いたくありませんが)。
ともかく、ジャズであることとかその形式に拘泥しているようなオールド・スクールな連中は置いといてちゃんと音楽そのものを前進させようとする意思のチカラを感じる音楽でした。
我々の時代(世代)の音楽は我々自身で創造していく、というような。
そのことには全面的に賛同したいし共感を感じる部分でもあります。
その上で彼の中にもしジャズという音楽への愛があって、それがすでに語り尽くされたものではないということを証明する意思もあるのだとしたら、もっと喜ばしいことだと思うのです。
調子に乗ってえらい本気なこと書いてしまった。
ほかにもドラマーが超絶だったこととかグラスパーがずっとビンボー揺すりしてたこととか書きたいこと多いんですがまたの機会にしますね。
ともかく今年出たこのアルバムは必聴だと思いますよ。
では今週のFunk 裏 Recommendに参ります。
今週はこの連載2回目となるウディー・ハーマンのレビュー、しかもCD化されていないというダブル掟破りだったのですが、サクブラ編集長のリクエストにより書かせてもらいましたよ。
カヴァーのチョイスが節操無いアルバムってだいたいそうですが、このアルバムもイナタイ音が多いです。
先が丸くなった2Bくらいの鉛筆のようにイナタイです。
Woody Herman - Memphis Underground
これはハービー・マンのヒット曲のカヴァー。
どう考えてもビッグバンドでカヴァーするような曲じゃないんですけどね。
クラリネットはウディーさんでテナー・サックス・ソロはフランク・ヴィカリ、トランペットはビル・チェイスです。
次はプロデューサー/アレンジャーであるリチャード・エヴァンスのオリジナル。
Woody Herman - The Hut
ストリート臭ぷんぷんでカッコいいファンクですね。
サイケなギターはフィル・アップチャーチです。
何やらせても上手い。
ミュート・トランペットのソロがハリー・ホール、トロンボーンのボビー・バージェスをはさんでラストにかましてくれるのがビル・チェイスです。
ビル・チェイスがもっとキてるのがこちら。
オーラスで満を持して登場、見事な空中戦でおいしいところを全部持っていきます。
Woody Herman - Sex Machine
もう笑っちゃいますよね。
キャット・アンダーソンとかメイナード・ファーガソンとかもそうですが、凄まじいトランペット・ハイノートを体験すると笑いがこみ上げるのはなんででしょうね。
さてそんなビル・チェイスさんですが、71年にブラス・ロック・バンド、チェイスを結成して結構な人気を得ることになります。
あの、普通ブラス・ロック・バンドって言うとトランペットの他にもトロンボーンとかサックスとか、色んな音域の管楽器が入るもんですけど、チェイスはトランペット・オンリーの4管編成。
サウンドの厚みとかそういうのは無視してひたすら高音重視。
しかも4人ともハイノート・ヒッターしばりという超高校級のドSな編成。
おまえら/この高速エイト・ビートな/ロック・グルーヴにのって
このブリリアントで/エキサイティングな/超高音トランペットが
きゅいきゅい/きゅいきゅい/いうのが/好きなんだろぅ〜
リーダー、ビル・チェイスさんの言葉を妄想して代弁しまいました。
でもトランペット・プレイヤーとか高音好きのドMリスナーにはたまらない、ある意味マニアックなバンドですよね。
こんな感じ。
大ヒットした「黒い炎」です。
Chase - Get It On (TV Show, 1971)
暑苦しいですよね。
特にヴォーカルの熊みたいなやつが暑苦しいです。
同じTVショウの映像をもうひとつ。
Chase - Open Up Wide (TV Show, 1971)
チェイスさん(ホーン隊の右端)のリーダーシップというか自己顕示欲というかオレ様度がとんでもなく渦巻いてるのを感じますよね。
全てはオレがいちばんカッコ良く見えるための舞台装置、という感じの。
まあJBしかりアメリカのショウ・ビジネスというのは全部そんな感じですが。
そんなチェイスですが、結局バンドは3枚のアルバムをリリース。
年中ツアーする人気バンドになってたのですが、74年8月にバンド一行を乗せた飛行機が墜落、メンバーとともにチェイスさんも帰らぬ人となってしまいました。
あんなに空中戦が得意だったのに残念です。
最後に無くなる数ヶ月前のライヴ映像。
トランペット4本によるソロ回しには抱腹絶倒するしかありません。
Chase - Get It On (Live, 1974)
では今日はこのへんで。
笑いが少なかったですが、チェイスの映像観ればじゅうぶん笑えますので。
また頑張ります。
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