2012年6月28日木曜日

2012/6/28のFunk 裏 Recommend

まいど。

2012年の半分が過ぎ去ろうとしている事実が受け入れ難い今日この頃ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。
それにしても6月ってこんなに涼しかったっけ。


早速今週の「出てますよ」のコーナーに参ります。
最近出たばかりの新譜ですがiPodのリピートでひたすら垂れ流している最近のお気に入りです。
女性ヴォーカリストとジャズ・トリオとのコラボ・アルバムです。

ジャズ・トリオはバンド名をザ・シングと言います。
マッツ・グスタフソン(サックス、主にバリトン)、インゲブリクト・ホーテル・フラーテン(ウッドベース)、ポール・ニルセン・ラヴ(ドラム)の3人組でスウェーデン出身。
いわゆるフリーとかアヴァンギャルド・ジャズと分類される類いの音楽を、懐古趣味ではなく現代的に、気合いを入れて演奏している世界的なグループです。
ザ・シングというバンド名はドン・チェリー(tp)の曲名に由来するものです。

女性ヴォーカリストはネナ・チェリーと言います。
そのドン・チェリーの娘であり80〜90年代にはポップ・ミュージックの世界で一世風靡した才女であります。

その2組が合体して、実に成熟しきったロックでジャズなサウンドを聴かせます。
カヴァーが中心で、スーサイドとかストゥージズとかMFドゥームとかオーネット・コールマンとかポップの裏スジを歩んできた変態達の曲が選ばれています。
トロンボーン、チューバといったブラスも加わっていて、ワールド・ルーツ音楽としてのブラス・バンド的なエッセンスも入ってます。

音の方を表現するのはもう少したくさんのスペースが必要なんですが、フリー・ジャズとかパンク・ロックとか色んなものが混じりつつ、現代最新の最良の部類に属する音楽としてレッキとして成立しているような完成度です。
甘くはないですが、苦くて逞しくてふてぶてしい音楽が好きな人はぜひという感じです。

48歳になったネナ・チェリーからは、もちろんあの頃みたいなハジけた感じは無いんですけど、代わりに説得力というか肝の太さというか成熟した女性だけが発することができる言霊のチカラ、深み、みたいなものを感じずにはいられません。

47歳のマッツ・グスタフソンが発する熱量もタダモノではない深さです。
ハリー・カーネイ、ハミエット・ブルーイット、ジョン・サーマンあたりの「正しい」バリトン・サックス吹きの系譜を感じさせる彼のバリサクは何というか、音色そのもののなかで「肉」と「木」が圧縮されせめぎあうような密度と意志が表現されているようです。
「ケツの穴から手ェ突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたろか」というのは関西人なら誰でも知っている文句ですが、僕の場合こういうバリサクを聴くとケツの穴からスリコギを捩じ込まれているような気分になります。
安アパートの窓なら簡単に割れるくらいの音圧も感じますね。


これ最高だなあと思いつつ僕が感じたのはこういうことです。
ネナ・チェリー捨てたもんじゃないなあということ。
マッツ・グスタフソンも捨てたもんじゃないなあということ。
フリー・ジャズも捨てたもんじゃないなあということ。
おっさんおばはん捨てたもんじゃないなあということ。
そして、世界中の捨てたもんじゃない人々が、固く握りしめた手を空高く突き上げたくなるような衝動に満ちた、実に痛快な音楽だなあということ。

Neneh Cherry & The Thing - Dream Baby Dream



またアツくなっていっぱい書いちゃった。
で、スリコギってどれくらいの太さですかね?




では今週のFunk 裏 Recommendの音源お試しコーナーです。
もはやAmazonの在庫も無いですが、今後再発される見込みも薄いので欲しい人はググってみた方が良いかと。

1曲目はこんな感じのブラスが映えてるファンク。

Reuben Wilson - What The People Gon' Say

渋いハーモニカはテナーと兼任のバディー・ルーカスさん。
ヴォーカルは浮いてる感ぬぐいきれませんが添え物的に聴く感じで。

次の曲も最高です。
ホーン奏者としてファンク・バンドやってたらこんな曲カヴァーしたいよね。
で、コーラスも担当しちゃいますみたいな。

Reuben Wilson - Tight Money


ところでこのアルバムをCDで再発したシカゴのレコード・ショップ、Dusty Grooveのレビューにはこんな風に書いてあります。
「ハモンド・ヒーロー、ルーベン・ウィルソンのモンスター・ファンク! はっきり言って彼の他のアルバムとはひと味違うハード・バーニング(hard-burning)でバッド・ウォーキング(bad-walking)な曲満載!」

いやはや英語ってカッコいいですよね。
オレも使ってみたいよこんなキーワード。

「すいません海鮮五目ヤキソバ、ハード・バーニングで」とか
「いやもう親父が酔っぱらっちゃってバッド・ウォーキングでさあ」とかそういう感じでしょうか。

続いてディスコの気配しのびよるタテノリなファンク・ナンバー。

Reuben Wilson - Got To Get Your Own


このトランペット・ソロってジョー・ニューマンですよね?
ジョン・ファディスかな。
いずれにせよ存在感ありますね。
ヘタウマな感じのテナー・ソロはピー・ウィーです。
この人は常にヘタウマ感だしてるのが魅力なのです。

続いてルーベン兄貴のテーマ演奏が「つま弾く」感じのジラしプレイでモヤモヤしてくる曲。
指で背中に「スキ」って書かれた遠い日のこと思い出してしまいましたよ。

Reuben Wilson - Stoned Out Of My Mind


さっきの話じゃないけど“Stoned Out Of My Mind”って“正体なくすほど酔っぱらってる”って意味だそうですよ。
つうことはやっぱりBad Walkingって千鳥足ってことで良いんじゃん。と変な納得をしてしまいました。

最後は兄貴のBlue Note時代の未発表曲で。
リー・モーガン(tp)、ジョージ・コールマン(ts)、グラント・グリーン(g)、レオ・モリス(ds)というメンツだから『Love Bug』セッションの1曲ですね。
サム&デイヴのカヴァーやってます。

Reuben Wilson - Hold On I'm Comin'

リー・モーガンにあやまれ、と言いたくなる軽薄さがスキ。

ではまた頑張りますね。

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